高齢者介護では安全の確保以外に、尊厳を保つことへの配慮が求められます。介護の仕事は着替えや排せつなどの行為を手伝うことも多いため、羞恥心を感じさせないように工夫しなければいけません。他人の目に触れないように衝立やカーテンなどの遮へい物を設けたり、質を保ちながらもできるだけ短時間で済ませるなどの配慮が必要になります。

高齢者にとって、子供や孫ほどに年齢が離れている他人から介護されている状況は決して最良のものとは言えません。体の自由が利かなくなったことで、本来なら自分でできることの多くを他人に手伝ってもらう状況に不安や苛立ちを感じてしまっているのが実状です。そのため一から十まで手伝うのではなく、時には簡単な手助けだけで済ませ、高齢者の尊厳を守ることも重要です。

高齢者の尊厳を守るときに難しさを感じる理由の1つにジェネレーションギャップがあります。高齢者の若い頃は他人から助けられたり、施しを受けるのは恥ずかしいこととされていました。そのため、介護サービスを受けることすら嫌がる人は決して少なくありません。そのような高齢者に対して強く反発したり、子供を諭すように接するのは非常に良くありません。馬鹿にされたと感じ、不快な思いを抱く高齢者もいるからです。長い人生の中で守ってきた価値観や考え方を頭ごなしに否定するのではなく、敬意を持って接しながら介護の必要性を分かりやすく説くのが尊厳を傷つけない方法になります。